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株式会社ユーニックと、株式会社トーセン。
家電配送設置業界を牽引してきた2社がなぜ、
統合を見据えて手を組み、
これからの業界にどんな革命を起こすのか。
2社のキーパーソンとなる3名がそれぞれの思いを語る、
ユーニック&トーセン統合秘話を紹介します。
株式会社トーセン
代表取締役 鈴木康文
BtoBに特化した空調整備に強く、関東・東北・福岡を中心に事業を展開している
株式会社ユーニック/株式会社トーセン
会長 小川純治
BtoBに特化した空調整備に強く、関東・東北・福岡を中心に事業を展開している
株式会社ユーニック
代表取締役 後藤梅生
大型家電や家具、オフィス機器などの重量物をクレーン車で特殊搬入するユーニック事業を主力とし、関西圏で事業を展開している
今、業界に必要なのは付加価値だ。小川は確信していた。日本の経済は脆弱だ。コロナ渦では価格競争に陥った中小企業がバタバタと倒れ、経済が一瞬で終わるのを目の当たりにした。彼らの商品には付加価値が足りなかった。本当に必要なもの、本当に求められるサービスであれば、たとえ値上がりしても求める人は必ずいる。この業界を価格競争の沼に突き落としてはいけない。だからこそ、業界のトップを走り続けたトーセンにも、新たな付加価値が必要だった。
「サービスを多角化し、窓口を1本化する」。それが小川の出した答えだ。トーセンとユーニックは、事業内容こそ似ているが、得意分野が異なった。まだクレーン搬入といえばピアノ運送業社に依頼するのが一般的だった時代、いち早く、大型家電や家具、オフィス機器などの重量物をクレーン車で特殊搬入するユニック(クレーン搬入)事業を主力とし、関西圏でのシェアを広げたのがユーニックだ。一方、トーセンが得意とするのは家電の設置工事である。(一般家庭にある工事が必要となるエアコンや照明などの設置工事でシェアを広げ、近年では業務用エアコンの取り付けなど、BtoBに特化した空調整備にも着手している。)
2社の主な顧客は、引越し業者や家電量販店だ。大型家具や家電を搬入したり、新しいエアコンを設置するのは引越しやオフィスの移転であることが多いが、その際、搬入も電気工事も同じ会社に依頼できれば、顧客にとってやりとりの窓口はひとつで済む。「引越しや電気工事に関する困りごとはすべてユーニック&トーセンに」。そんなイメージの確立こそ、小川が求めた、価格競争に頼らない付加価値だった。
「トーセンとユーニックを統合しないか」小川に声をかけられた後藤は、迷わず首を縦に振った。後藤にとって小川は、尊敬する経営者であり、ともに切磋琢磨し、業界の未来を語り合ってきた戦友でもある。
2人の出会いは18年以上前に遡る。かつて小川と鈴木、後藤の3名は同じ家電配送・設置会社の社員だった。当時、小川と後藤は会社の中で重要なポジションを担う者同士。鈴木は小川の部下という立場。時にぶつかりながらも互いに信頼し合い、社の売上を牽引した。
しかし、その会社はまもなく業績の悪いグループ会社の影響を受けて倒産。最後まで会社に残った小川らは事務所の鍵を業者に引き渡し、文字通り“チリひとつ残さず”後始末を行ってから解散した。
会社がなくなり、後藤は感傷に浸る間もなく、生まれ育った大阪に戻ってユーニックを立ち上げる。一方、仕事に情熱を注いできた小川は心にぽっかりと穴が空き、一年間ゴルフに明け暮れたという。だが、小川の業界への思いは完全には消えていなかった。小川と後藤、鈴木の3人は情報交換と称して定期的に会い、業界の未来について語り合う機会を重ねた。
そして、後藤が関西でユーニックをスタートしてから1年後、小川は鈴木とともに埼玉でトーセンを立ち上げる。こうして、関西と関東、それぞれの場所で着々とシェアを広げ、業界を牽引してきた2社は、小川の声がけで協力関係を結んだ。
「我々は、運送屋、電気工事屋として特殊な技術を持っているわけではありません」。小川は言い切る。「提供しているサービスは他社と同じ。ではなぜトーセンとユーニックは業界でシェアを取れたのか?その答えは、基本を徹底していたからにほかなりません」。
小川の言う“基本”。そのひとつが、電話対応だ。
たとえば、問い合わせの電話を何コールで取るか。折り返しの電話のタイミングは適切か。あるいは、困りごとを抱えるお客様の心境に、いかに寄り添った言葉をかけられるか。小川は会社員時代から、こうした、一見事業とは関わりのない事務対応のクオリティに、心血を注いできた。
それはなぜか?その問いに小川はこう答える。「業界では一般的に、商品といえば現場のことを意味します。しかし、私の見方は違う。お客様と自分たちの最初のコンタクトポイントは、『問い合わせの電話』にほかならない。我々の電話対応はすでに、ブランドを作り上げる商品の一部なんです」。
もちろん、現場でのふるまいも“基本”のひとつだ。挨拶、丁寧な作業、身だしなみ、こうしたひとつひとつが、リーディングカンパニーとしてのブランドを強固にすることを小川は経験上熟知している。
「私たちの仕事は、基本的にBtoBtoCです。引っ越し業者や家電量販店から依頼を受けて、“引越し屋さん”、“電気屋さん”としてエンドユーザーの方にサービスを提供している。『ユーニック』や『トーセン』の名前は出ないけれど、依頼先である企業の看板を背負っているというプライドを持ってやっています」
そう語る後藤の眼は自信に満ちている。
顧客が望んでいることを先回りして考え、痒いところに手が届くサービスを提供する。そのために必要不可欠なのが、常に一定の技術、接客を提供する人材リソースの確保だ。
「ユーニック&トーセンでは、現場を完全再現した研修施設の建設や、実践しながらスキルを身に着ける学習プログラム。接客の基本や座学も盛り込んだこれまでにない人材育成システムを導入していく予定です」力強く語る鈴木に、小川が続ける。
「わかりやすく、正確に、そして怒らずに教えて、誰もが一定のクオリティでサービスを提供できるように育てる。私たちは、そんな教育を目指しているんです」。小川のその思いの裏には、自身の原体験がある。
「私の父は大工で、子どものころからよく仕事を手伝っていました。だから、水平器が“髪の毛1本分右”に傾いているだけで金槌が飛んでくるような、厳しい職人の世界を経験してきた。でも、今は新人がベテラン職人の背中を見て覚えるような時代じゃあありません」
人手不足の業界。まともなサービスを提供できる人材が育たなければ、顧客からの評判が落ち、価格競争に落ちていく。その現状を、ユーニック&トーセンは変えたい。
「『ユーニック』とは”吊り上げ”を意味する言葉です。人の力を吊り上げることで、業界全体を吊り上げる。それが、この業界でシェアを獲得している私たちの使命だと思っています」
業界を変えたい。血が通った熱い思いで。動脈と静脈をイメージした青と赤のグループロゴには、小川ら3人のそんな思いが込められている。ユーニック&トーセンの挑戦は、まだ始まったばかりだ。